市立小樽美術館(色内1・苫名眞館長)3階一原有徳記念ホールで、6月21日(土)から、一原有徳氏を尊敬し親交があった帯広在住の現代美術家池田緑氏(82)の「池田緑―マスクに覆われた世界」の開催が始まった。
各時代を象徴する表現をピックアップし、インスタレーション「マスクプロジェクト」を再構成し、版画家一原氏のオマージュ的展覧会となっている。
池田氏は、1943(昭和18)年朝鮮のハムフン市に生れ、終戦後、秋田・札幌・釧路で育ち、現在は帯広在住。北海道教育大学を卒業し、教鞭を執る傍ら、全道展に連続入賞するなど油彩画家活動を続けるが、ファンだった一原氏の影響もあり、1993(平成5)年50歳を機に退職し、これまでの画家活動にピリオドを打ち現代美術家としてスタート。個展や展覧会活動を続けている。
会場を4つに分け、空想の世界「アリスの風景」コーナーでは、初期作品の十勝連峰をジーンズに例えた油彩をはじめ、シルクスクリーン(版画)のジーンズをコラージュした1993(平成5)年から1994(平成6)年の作品も展示。
悪化する自然環境の保全を願ったインスタレーション「マスク・プロジェクト」コーナーでは、1999(平成11)年サホロ湖の2,000本の樹木に日本製ガーゼマスクをかけてスタートし、世界中にマスクをかけたいと、北海道文化財団の派遣芸術家として2001(平成13)年に、2004(平成16)年には文化庁の派遣学芸員としてニューヨークに行き、版画技法も学んだ。2001(平成13)年にはテロにも遭遇、ニューヨークの一般市民から公募した36名の出演者にマスクをかけてもらい、映像「Silent Brerth」にも収め会場で上映し、36名分のマスクも展示。
2011(平成23)年に東日本大震災が発生し、その直後マスクを使用している人々を見て、本来の目的で使用されていることを知り、アートとしてのマスクプロジェクトは同年開催の小樽ハルカヤマ芸術要塞で最終章とし、3月11日にちなみマスク311枚を樹木にかけた作品を発表。
ユニークな作品「プラスチックテープ」コーナーでは、現在入手が不可能となりつつある文具プラスティックテープに、日付や言葉を刻んだ1年分をアクリルケースに収納。初めは出生年月日を刻印し、その後メッセージも刻むことも。現在83本目を制作中で82本を会場に展示し、池田氏が大切に保管している一原氏からの手紙も初公開されている。
同展のために、一原氏へ敬愛と感謝の意を込めて、テープ幅6mmのベルギー製のいぶし銀と黒のテープに「一原氏の100歳の人生を讃えて」と、1910 ICHIHARA ARINORI 2010と100本に刻印した2作品も初公開した。
4つ目のコーナー「マスクをかけた世界のまち」は、ドイツ・ケルンのアート展にスタッフとして出かけ、持参した日本製のマスク100枚を街中の標識やフェンス・階段・ゴミ箱などに張り付けた写真を引き伸ばし展示。
池田氏は、「一原さんが50歳からの作家生活で私も50歳からの現代アートのスタートをさせた。一原さんと重ね合わせて作品をご覧いただき、一原さんの記念ホールに合わせて作成した、一原さんの100歳の人生に対する私のオマージュ作品も正面に展示した。1999年から大気汚染など環境問題について、ひとりのアーティストとして活動したいと、日本製のマスクを使用して、世界中でアートを展開してきた活動も重ねてご覧いただきたい」と話した。
同氏が在廊する6月21日(土)・22日(日)・7月19日(土)・20日(日)・8月9日(土)・10日(日)・9月6日(土)・7日(日)の来館者にポストカードプレゼントキャンペーンも実施する。
サロン・ド・宮井(花園1)でも、「現代美術家・池田緑の世界」が6月21日(土)~7月6日(日)で開催されている。
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