市立小樽美術館(色内1)2階特別展示室で、混沌とした一時代に生れた舞踏の根城・海猫屋にまつわる人々とその作品を紹介する特別展「海猫屋の時代」を、10月18日(土)~1月18日(日)に開催する。

会場には、海猫屋・増山誠店主所蔵の開業時や北方舞踏派の人々の写真パネルなどをはじめ、実業家・秋野治郎氏が所蔵する海猫屋を再現するジャンデリア用車輪6本をはじめ、石蔵の扉・ランプ・北方舞踏派の小島一郎着用の舞台衣装や、小樽の写真家・志佐公道氏が激写した北方舞踏派や鈴蘭党の貴重な写真、小樽を拠点とする舞踏家・田仲ハル氏所蔵の昭和50年代~60年代の公演ポスター等グラフィックデザイン、舞踏の目撃者だった版画家・一原有徳氏の作品もずらりと展示し、美術家・大畠裕氏、詩人・木ノ内洋二氏らの作品も展示紹介する。
1906(明治39)年に建造された旧磯野倉庫は、赤レンガ造り3階建ての独特な雰囲気を醸し出し、土方巽氏らを中心に「暗黒舞踊」の拠点となり、土方の流れを汲む「北方舞踏派」は、小樽の美術評論家・長谷川洋行氏や一原氏らが、同倉庫を舞踏の拠点としてはどうかと持ちかけ、北方舞踏派に共鳴した増山氏らが出資し、1976(昭和51)年6月に舞踏の拠点海猫屋が誕生。喫茶店・ライブハウスとしてスタートし、舞踏団の活動やアーティストが集う文化を優先した場所となった。

1982(昭和57)年に小島氏を残し北方舞踏派が去り、舞踏を守るために活動を続けた増山氏は、舞踏を全国に広めたいと大駱駝艦主宰の麿赤兒と親交を深め、1987(昭和62)年アメリカ公演に同行。1988(昭和63)年には自ら海猫屋の舞台に立つこともあった。
1986(昭和61)年には小島氏と増山が新舞踏集団「古舞族アルタイ」を結成し、暗黒舞踊を小樽から世界に発信しようとしていた。1989(平成元)年に転換期を迎え、増山氏は店内をシアターからレストランへ改装。かつての舞踏を演じたステージは無くなり、レストラン・バーとなり客層も一変した。
全国からの観光客をはじめ、映画・ドラマのロケで小樽を訪れる監督や俳優・ミュージシャンやスポーツ選手と新たに交流を深め、海猫屋を舞台にした「海猫屋の客」の著者・村松友視氏は、増山氏の結婚式の仲人も務めるほど親交を深め、2016(平成28)年に海猫屋40年の歴史に幕を下ろした。
増山氏は、「40年近く営業し、海猫屋に来る有名人が小樽のまちを歩いたり、海猫屋には誰か彼かが来ている。小樽は良いところ・海猫屋は良いところだと思わせるよう、みんな協力してくれて感謝している。海猫屋が私を育ててくれた」と語る目は輝いていた。

関連事業第1弾 「舞踏と海猫屋の時代」と題して増山氏の特別講演会を、10月18日(土)13:30から同館1階研修室で開く。事前申込(0134‐34‐0035)が必要。
関連事業第2弾は19日(日)15:00から、2階特別展示室内で「海猫屋の時代」舞踏パフォーマンスを開催。出演者は田仲ハル氏・明夜氏・副島ひまり氏。
海猫屋の時代 小樽70年代-舞踏の原点
10月18日(土)~1月18日(日)9:30~17:00
市立小樽美術館(色内1)2階特別展示室 要観覧料
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