市立小樽文学館(色内1・亀井志乃館長)企画展「小樽文学館と模型クリエイター 展示をつくる仕事の舞台裏」が、6月22日(日)まで開催されている。
同館では、文学者の作品や物語をテーマに様々な企画展を展開。展示をより分かりやすく、体験的観覧を楽しんでもらうため、建築模型や空間ジオラマなどの技術をもった同館職員の田中まりさんが、制作した数々の模型を制作過程とともに紹介している。
関連イベント第1弾は、5月17日(土)14:00から、本展担当の伊藤あや学芸員による解説が展示会場で開催された。展示解説のほか、自身の企画した展示から学芸員目線の展示構成を考える上で模型の重要性も紹介。
模型の出来栄えは専門業者にも引けを取らないものばかりで、精工によりリアルで効果的に作るための工夫が施され、同館展示の裏側にスポットを当て、次世代へのバトンを繋ぐ機会となることも目的としている。
1994( 平成6)年当時勤務していた博物館で、田中さんが、初めてチャレンジした模型の原点ともなる昆虫の作品も展示。美術系大学を卒業後、昆虫の細密画を描き、雑誌に掲載されていたこともあり昆虫には詳しかった。
経年劣化で損傷を激しかった31年前の模型を修復し、当時の制作写真と修復した制作過程の写真も展示。
同館第1弾の模型は、小熊秀雄と池袋モンパルナス展での、昭和6年に建てられた芸術家たちが集まるアトリエ村。
元になった模型は東京都豊島区にあり、玉川元館長が10分の1の模型を実際に見て「ぜひ小樽文学館でも来館者に見てもらいたい」と、模型の写真を元にアトリエ村の模型を展示に合わせて制作した。小樽生れの小熊秀雄が名付けた池袋モンパルナスだが、小熊氏が39歳で亡くなり、この村も戦争で焼けてしまった。
梅ヶ枝町の高台にある施設美術館「あとりゑ・クレール」とその周辺を再現した模型や、小樽商大学付属図書館内に展示されている、商大90周年記念した小樽高等商業学校の模型などを展示。大正末から昭和初期の様子を制作したジオラマで、小林多喜二や伊藤整が見ていた風景と思われ、田中さんの模型の中で一番大きいものとなる。
伊藤学芸員は、「小樽高商の模型は田中さん一人で作り上げたもの。正門の位置は今と変わらず、ジャンプ台を入れてとの先生からのリクエストがあった。卒業アルバムから建物を抜き出し参考にしたり、当時はモノクロ写真で卒業生にも話を聞いた。どこか不自然にならないよう、周りとのバランスを考えて緻密に作られた。
紹介した3つの模型は、建物だけではなく周辺の環境や背景も立体的に取り入れたジオラマ作品。展示室という限られた空間で、時代も距離も遠い場所の雰囲気も感じることができる」と説明した。
伊藤学芸が企画した展示の経緯や意図も紹介され、2022(令和4)年の企画展「増殖する怪異—朝里樹の仕事展」でも、予備知識がなくても楽しめるようにと田中さんに相談し、3歳児くらいの大きさのミントゥチ(河童)を制作し、おもしろい展示を工夫した。
これらの模型は、作家・朝里さんの怪異妖怪の面白さを、来館者にも分かってもらいたいと大きな助けになっているという。
第2弾は、6月8日(日)14:00〜15:30 1階研修室で、田中まりさんによる解説とお話「わたしの模型の作りかた」を開催する。聴講無料。
小樽文学館と模型クリエイター 展示をつくる仕事の舞台裏
4月5日(土)〜6月22日(日)9:30〜17:00 月曜日休館
市立小樽文学館(色内1) 要入館料