2007年1月のベストママ
小樽地獄坂酒亭 すえおか

末岡 睦(むつみ)ママ

 小樽に“すえおか”のママありと知られている。80才を超えても、その記憶力・判断力・説得力には、いささかの緩みも見せない。

 樹齢350年のニレやタモの巨木にこだわった木造りの店は、花園で20年、富岡にそっくり移築して21年、計41年間の過ぎ去った時の重みをしっかりと刻み込んでいる。

 小樽地獄坂の酒亭「すえおか」のママは、酒は一滴も飲めないのに、培った人脈の広さと情報力で、81才になった今でも現役バリバリで、周囲からは一目も二目も置かれる存在だ。酒亭のカウンターの向こうから、小樽の街の盛衰を自分の眼でしっかりと見てきた。小樽に生まれ育ち、東京の津田塾で英語を修得した“才媛”の足跡は地球を何回りしてもたりない。

 日本山岳会の会員で、世界の名だたる高峰に何回も出掛けた。1968(昭和43)年には、ネパールからヒマラヤのエベレストにトレッキングに行った。「エベレスト・ビューホテルから、真向いに見たエベレストが忘れられない。飛行機の窓から、雲のはるか彼方にカンチェンジュガが見えたのにはびっくりした」という。以降、7~8回もヒマラヤに行き、日本人がヒマラヤに行く先駆けとなった。「最後のツアーは4、5年前に行ったのよ」と、当たり前に語るやわらかな口調は、まるで年齢を感じさせない。

 アラスカのマッキンレー、アフリカのキリマンジェロ、中近東やシリア・ヨルダン・ウズベキスタンと、人の行かない所ばかりに行った。キリマンジェロに登った時に「山頂にはひからびた豹の死骸はなかったわよ」と、ヘミングウェイも真っ青にする元気さだ。さらに一昨年には、マッターホルンをスキーで、JALの機長の息子さんと滑り降りたという。

 8年前からは、PC(パソコン)を独学でマスターし、「画面に出てくるイルカちゃんとどれくらい遊んだか分からないわよ」と、インターネットを駆使する。「小樽ジャーナルもお気に入りに入っているわよ」

 80の坂で店を辞めようと思ったけど、趣味の俳句や水彩画を画いているだけだとボケてしまうからと、新年からは営業時間を夕5:00から10:00まで、料理1人3,000円のシステムで店を続けていくとますます張り切っている。

 小樽生活80年を超えて、情報発信を続ける小樽地獄坂の酒亭のママ。

小樽地獄坂酒亭 すえおか

営業時間17:00~22:00
小樽市富岡1-13-15
0134-23-4700