甲谷 京子ママ
小樽の観光名所・堺町通りのメルヘン交差点近くのレストラン『時代屋』のママ。
トレードマークのバンダナを頭に巻き、店内をきびきびと動き回わり、50種類もあるメニューの仕入れから調理までを一手にこなす。料理の一品一品に独特の工夫がなされており、味付けの良さから常連客や観光客の人気も高い。
多くの人に支えられ、開店から既に22年もの年月が過ぎ去った。今では観光名所となった堺町通りの変遷を身をもって眺めてきている。開店当時は、周辺はオフイス街で、いろいろな会社が軒を列ねていた。このため、店はモーニングサービスの客で大賑わいだったという。
小樽生まれで、手宮小、末広中から潮陵高(定時制)に。バレーの部活に夢中になりながら、札幌の会社に勤務。21才の時に、高校の同級生と結婚。「ずーっと続いているのは、私が家に居るより、店に居る方が多いからかな」と、大きな目が笑う。
最初は商売を始めるとは思わなかったが、花園ではやっていたスナックを譲ってもらい3年間続けた。「時代屋」も開店し、当初は2店を経営していたが、店を行ったり来たりでは無理があるので、入船の一店に集中した。
当時はコンビニもなく、堺町には、北一硝子の事務所兼店舗が一軒あるだけで、オルゴール堂も家具屋さんで、観光バスもまだ来ておらず、周囲はオフイス街で会社員が溢れていた。朝はモーニングサービス、夜は食事と宴会で、一日中本当に忙しかったという。
一度食べた味は忘れないと言うママは、レストラン三幸に勤めていた時に食べさせてもらった、当時は珍しかったステーキ・グラタン・ドリアの味が舌に残っていなかったら、店はやらなかっただろうときっぱり。
時代も変わり、今では口コミで知った観光客が一様に「こんにちは」と言って店の扉を開ける。
休みの時に海外旅行に行くのが趣味で、これまで アメリカからアジアまでを経験し、食材を仕入れる。名物のカレーには、タイで手に入れた23種類の香辛料が入っており、札幌からわざわざ食べに来る客も多い。
忙しい日々を送るママは、ビールが大好き。「本当にビールっておいしいわね!」。つぶらな瞳が一段と大きくなった。