2017年4月のベストママ
土の音

今井 啓子ママ

 春の足音が聞こえて来る3月になると、銭函にあるトベックス自遊林内の手作り陶器とやまぶどう籠の店「土の音(つちのね)」が、2ヶ月の冬眠から目を覚ます。編み方・形・大きさなど、種類豊富な籠を取り寄せ展示販売している。

 同店オーナーの今井啓子さんは、東京生まれの東京育ち。住み慣れた東京から、2006(平成18)年10月に、札幌出身の夫の希望で桂岡に移住。友達もできず、半年も続く北国の冬に馴染めず、苦しんでいた頃、友人から「自分の居場所として、この店舗を借りたら?」とアドバイスを受け、2010(平成22)年5月に、姪が名付け親となりオープンした。

 陶芸の先生と自分の作品の他に、昔から自然素材の籠が好きだったこともあり、東京都杉並区阿佐ヶ谷南にある「かごや」から仕入れて販売を始めた。籠の内布は、あとりえNORI(手稲)で制作したもの。

 現在は、姪の友人で鹿児島県のkobo
syuro(工房シュロ)の比地岡陽子氏が制作する、赤土に白泥を施した技法の陶器などを、籠と一緒に販売している。

 やまぶどうやくるみの蔓を使った籠は、使い込むほどに艶が出て、今井氏は「育てる籠」と表現した。籠の魅力は、着物にもジーンズにも正装にも合い、使い勝手も良いこと。

 初め興味がなかった人も、6年間で6つの籠を買うほどになったり、自分だけでなく周りの人にプレゼントしたりと、籠の良さを知るとリピートしてくれる。

 「使ってみて初めて知る籠の便利さや良さを購入者から聞いたり、迷っている人には、何度か通って気に入った籠に出会ったら、家に連れて帰ってもらえれば」と話す。

 店を持つのはここが初めてで、どちらかと言えば人見知りの性格だった。癒しの空間を心がけ、友達も沢山できて感謝しているという。

 今井氏のモットーは“日々穏やかに暮らすこと”。初めて体験する北国の冬の出来事を受け入れることに頑張ってきたという。怖くて歩けなかったブラックアイスバーンや、ホームセンターの店頭の商品が、季節ごとにめまぐるしく替わることなど、東京ではなかった雪国での生活の違いを理解し、受け入れてきた。

 「店舗周辺の池のカモを眺め、色々な人に出会えることを楽しみ、籠好きなお客さんのために続けていきたい」と笑顔で話した。

土の音

小樽市銭函2-30-3 株式会社トベックス自遊林内
電話:090-1887-4186
営業日:木~日曜日
営業時間:11:00~17:00
定休日:月~水曜日・1月・2月