2006年2月のベストマスター
美園アイスクリーム店舗 アイスクリームパーラー美園

漆谷 匡俊(うるしや ただとし)マスター

 大正ロマン時代から現在まで、アイスクリームの香りとともにノスタルジアと思い出を売る、小樽美園アイスクリームの3代目マスター。1919年(大正8)年の創業。北海道で初めてアイスクリームを登場させ、大正・明治・昭和初期と一世を風靡した。そのさわやかで独特な風味は、懐かしい手造りの味として、87年も親しまれている。

初代が創業した美園は、「客が和服・着物などよそいきの格好をして集まるぐらいおしゃれな店だった」という。店内の壁を飾る当時の写真を見ながら「初代の頃の客は『美園のクリームを飲みに行こう』が、うちに来る時の合言葉。今、アイスを食べに行こうなんて言う若者もいるけど、アイスクリームは食べるんでない飲むもんだ」

大正から始まった店は、1代目、2代目の頃、夏場は特に忙しく、外に長蛇の列ができ、北海道一、回転率の良い店と言われた。昭和後半から、現マスター3代目は、父2代目と一緒に営業を始めた。そばやラーメンなど沢山のメニューがあった。

しかし、昭和50年になり、ファーストフードの時代になり、長崎屋もでき、都通りを通る人が少なくなった。2代目から3代目と引き継がれたが、「新作を作れば売れるが、またすぐ新製品を作らなければ、飽きられる。母親も調理師も年になって、ふと気付いた時には時代が変わっていた」

それからは、2Fのみの営業に変え、1Fを貸店舗にした。従業員も減らし、1、2年営業したが、「なんだかムズムズしてきた。このまま死ぬのはヤダと思った」という。その時に、「ふっと『美園と言えばアイスクリーム』と天から聞こえてきて、それから考え始めた。何が何でもアイスは捨てられない」と、今までのアイスの造り方をバラバラにして、キーワードを“小樽・大正”と大正ロマンのアイスを造り出すことにした。

しかし、初代のレシピはなく、2代目のアイスも初代から引き継いだものだが、味はブレンドされ、そのものではなかったが、“口が覚えていた”。叔母や近所の人、昔の頃の客に相談したりして、何回も試したという。「大メーカーなんか冗談じゃない。生意気と言われてもNo.1の味を作るとやってきた」

美園のファンに贈る“大正ロマンアイス”。「“昔、おばあちゃんに連れて来てもらって、懐かしくなって来た”その人が、今度は孫を連れて来て、昔の思い出をアイスを食べながら話してくれると本当にうれしい。100年は守って続けたい」と、小樽の思い出を背負う美園アイスクリーム、64歳のマスター。

美園アイスクリーム店舗 アイスクリームパーラー美園

営業時間10:30~21:00(火曜定休)
小樽市稲穂2-12-15
0134-22-9043

お店のHP