2008年4月のベストマスター
かくてるの森 みちくさ

村井 祐三マスター

 手作りの内装でほっとひと息つける癒しの空間が花園繁華街にある。カクテルはもちろんノンアルコールも豊富に揃え、誰でも気軽に立ち寄れる店「かくてるの森 みちくさ」 のマスター(31)。

 木材でアレンジされた店の扉を開くと、ずらりと並ぶ何十種類ものリキュールが目に入る。ブラウン管テレビから白黒映画が流れ、次第に心地良いJAZZが耳に入ってくる。マスターのコンセプトは“気軽に立ち寄れる店”、“ほっとひと息つける癒しの空間”。

 名古屋で生まれ育ち、工業高を卒業して自動車整備士として働いたが、ものづくりがしたいと、ガラス職人を目指して地元の工房へ。都会から離れて山や海などの自然に触れたいと、ガラスの街・小樽の地へ足を踏み入れた。3年間修行を積んだが、「工房の現実を見て、僕がガラス職人だけで食べていくのは難しい」と挫折。

 気分転換も兼ね、日本の北から南へ大移動。沖縄のリゾートホテルでバーテンダーとして腕を磨いた。9ヶ月後、また小樽に戻り、今度はホテルマンとして働くことになった。これらの経験から、自分のスタイルで店をやりたいと、残ってる貯金で、昨年10月に店をオープン。

 ぬくもりのある空間作りを目指して、木材をメインに内装をリフォーム。床に木の板を張り、リキュールを並べる棚のガラスを取り除き、外壁の看板も手作りで仕上げた。「バーと言ってしまうと固いイメージがあるので、店の名前をひらがなにして、気軽に入れるように工夫した。カクテルを身近に感じてもらいたいから、お客さんの要望に合わせて色々なカクテルを作る」

 大好きな小樽が、年々衰退化していると危惧し、小樽を活性化させるために飲食店オーナーたちが集う『TEAM
OTARU Knights』の一員になった。

 「若者がどんどん離れているので食い止めなきゃいけない。若い人たちが小樽に残ってくれたり、移り住んでくれるような街にしなければいけない。小樽は好きだけど、生活するには厳しいからと札幌に引っ越す人もいる。スナック店が多くある花園で、自分の店をオープンすることに少し抵抗はあったが、小樽の中で一番活気づかなきゃいけない場所だからと思って、ここで店を開くことを決めた。スナックだけじゃなく色々な店があった方が、お客さんが足を運んでくれると思う。今の若い人たちは、外で飲まないで家で飲むことが多い。そのまま大人になってしまうと、外でのお酒の飲み方・楽しみ方や、人とのコミュニケーションの取り方がずっと分からないままになってしまうので、今のうちに外に出てもらえるような取り組みが必要だと思う」と熱く語る。

 少しでも花園に足を向けてもらうため、ノンアルコールも豊富に揃えて昼も営業している。「若い人と高齢者との交流の場にもなれば」と積極的に取り組む。

 小さな顔にハンティング帽を被り、鼻下のヒゲが似合うマスターは、これからもずっと小樽に住み、小樽の活性化を目指す。

かくてるの森 みちくさ

小樽市花園1-11-21
営業時間:14:00~18:00、20:00~3:00
定休日:第2・4水曜日
0134-24-3793