道井 忠雄マスター
父親の“安くてうまい”を守る、花園3丁目商店街にある食事処「三川屋」(みわかわや)の2代目社長。
「三川屋」は、祖父が、酒の小売業として札幌で開業した90年の歴史がある店。昭和12年には、父親が小樽支店をオープンした。
「当時は、小樽で一番の量を売っていたと聞く」と誇らしげに話す。
戦後になると、アイスキャンディーや飴などの甘味を売る駄菓子屋に。「甘ければなんでも売れた時代だったらしい。この商店街には、映画館がたくさん並んでいたから、賑わっていたし、そのお客さんが甘味を買いに来たんだ」
その後、宴会主体の飲食店に替えた。100人収容可能な宴会場が自慢だ。「こんなに儲けていいのかと言うぐらい売れたのを覚えている。僕もお坊ちゃまで、近所の人からは、坊や坊やとからかわれた。高校生になると、さすがに名前で呼ばれるようになったけどね」と思い返す。
高卒後、法政大学に入学。「男が自分一人だったから、後を継がなきゃいけないとは思っていたが、卒業してから少し遊んで帰ろうと思っていた。だけど、病弱な父から、早く帰って継いでくれと言われたのですぐに戻ってきた」
大卒後、小樽のレストラン三幸で6ヶ月修業し、22歳で店を継いだ。「安くてうまいを守ってやってきた。安いのにうまいにこだわってきた。お金持ちじゃなくて、かしこまった席でもない宴会を求める人たちのためにやってきた」
店の空き時間には、趣味の小樽歴史探索。昔の花園3丁目商店街のどこにどんな店があったか、誰が営業していたかを、緻密に調べている。「もしかしたら、お客さんから、この場所で働いていたという声が出るかなと思って」と、集めた写真を店内に飾り、「常連さんばかりに目がいっていたが、今は、ネットの口コミでお客さんが来る時代だ」と、市外から足を運ぶ人に、栄えていた小樽を知ってもらおうと、同町会の写真だけでなく、市内の色々な商店街の写真も並べている。
すでに100年が経つ大正時代の建物内に、母親の嫁入り道具を飾り付け、レトロな小樽の雰囲気を作り出している。
「この商店街は映画館を中心に栄えた。今は、1軒もなくなってしまったけれど、屋外映画上映のイベントを開催して、もう一度、町を活性化させたい」
今年63歳。生まれ育った町の活性化を目指して活動中。