「高島おばけ」を科学する、市総合博物館


 小樽沖の石狩湾で、春から夏にかけ、蜃気楼が見られ、小樽では「高島おばけ」という。全国的にも珍しい現象で、1月20日(日)、市総合博物館(手宮1)で、この蜃気楼の科学的原理を紹介する講座が開かれた。
shinkiro1.JPG 学芸員リレー講座「蜃気楼を科学する」は、20日(日)10:30~11:30、13:30~14:30、16:00~17:00の3回開講し、実験装置による蜃気楼の再現と科学的原理を紹介。
 この日の講座では、大鐘卓哉学芸員が、4~6月頃に数回しか観測出来ない蜃気楼「高島おばけ」を紹介した。蜃気楼は、温度の異なる空気の境界で、光が屈折するために遠くの景色が通常とは違って見える現象で、科学的に「大気光学現象」という。明治時代の書物(三航蝦夷日誌)に「高島おばけ」と記されており、小樽では、この名が使われている。
 蜃気楼には、上位蜃気楼と下位蜃気楼の2種類がある。「高島おばけ」は上位蜃気楼で、上方に反転像が見え、限られた地域で年に数回しか観測されない珍しい現象だとしている。北海道では14ヶ所、本州では7ヵ所で観測されているが、毎年観測されているのは、道内の石狩湾・オホーツク・苫小牧のみ。下位蜃気楼は、色々な地域で年中観測出来る。
 大鐘学芸員は、この上位蜃気楼を室内で見られる実験装置を紹介した。約60℃に暖めた2枚のパネルの間に、扇風機で冷たい風を送り、約2mほど離れた壁に貼った船の絵を覗き見るもので、まさに「高島おばけ」のように上方に反転した船の絵が浮き上がった。
shinkiro2.JPG 市内オタモイの中川春二さん(66)は、「トラックの運転手を10年して、石狩と小樽を往復していたが、この装置で実際に目で見てみると、運転中に小樽から見えてた景色が、高島おばけだったという分かった」と何回も覗き込んでいた。
 この蜃気楼「高島おばけ」が出そうな日は、移動性高気圧に覆われる4~6月の晴れて暖かい日で、北海道に南風が吹く日。風は強すぎず、視程が良い時だという。
 「出そうな日は分かるが、実際に出る日は10日ぐらい。予報は出来ない。興味があって待ち構えていても観測できず、何回もふられたこともある。蜃気楼を観測するには、双眼鏡や望遠カメラなどが必要だが、科学的な知識と根気と運も必要」(大鐘学芸員)と話し、高島おばけの観測スポットは旧高島トンネル前だという。
 大鐘学芸員は、小樽市民などに蜃気楼ウォッチャーになってもらい、観測出来た日に報告を受けて、小樽を蜃気楼の観測所としてPRしたいとしている。
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 学芸員リレー講座(第2回)「蜃気楼(しんきろう)を科学する」