銭函4・5丁目の自然を紹介 ミュージアム・ラウンジ


zenibako4-5-1.jpg 市総合博物館(手宮1)のミュージアム・ラウンジ「小樽のさいはて 銭函4・5丁目の自然」が、10月17日(土)13:30~15:00、同館研修室で開かれた。
 ミュージアム・ラウンジは、同館の学芸員や専門家が小樽の歴史や自然、科学技術についての話題を提供する小さな教室。
 今回は、山本亜生学芸員が、風力発電施設計画が浮上している石狩砂丘を含む小樽市銭函の4・5丁目の豊かな自然環境と貴重な動植物について、写真をスライドしながら紹介。
 「銭函4・5丁目は、小樽のさいはてで、博物館からは遠いところで、小樽に住んでいても行ったことのない人が多いと思う。2004年から、博物館では、ボランティアや関係者と協力して、植物と昆虫の調査をしている。春から秋の2~3回ずつ、昆虫や植物を採取して、その成果を織り交ぜながら自然を紹介している」と話した。
 同所は、昭和50年までは「石狩町」で、「オタル」という地名が生まれた場所。銭函から厚田までの25km続く大砂丘「石狩砂丘」があり、潮風と強い日差しにさらされる厳しい環境で、そこで生きることが出来る特殊な動植物が棲んでいる。環境省や北海道指定の絶滅危惧種も多く生息している。
 山本学芸員は、石狩砂丘に生息するハマナス、ハマヒルガオ、ハマエンドウなど9種類の海浜植物と、コホネゴミムシダマシ、オオメナガカメムシの一種、スナムグリヒョウタンゾウムシなど16種類の海浜昆虫の写真をスライドし、その動植物の特徴や、貴重さを解説した。
 「ここのハマナスの群落は、石狩灯台のよりも大きく、ハマエンドウの群落もある。良い季節に行くと一面ムラサキになる。植物も特殊なものが多ければ、昆虫も特殊なものが多い。昆虫は、種類が多く、きちっと調べると、その場所の環境が分かる。ウンランチビハナケシキスイは、2mmくらいしかない虫で、自分でもよく見つけられるなと思う。エゾアカヤマアリは、4万3,000の巣がここにあることで有名だが、石狩新港の開発によって、10分の1に少なくなった。それでも、まだたくさんいる。
 一見、何もない砂丘でも、たくさんの動植物が棲んでいる。残念なことに最近は環境が悪化している、バギー車が走って植物が踏まれ、道が掘られて崩れている。これによって、植物の群落がなくなり、昆虫が消えていく。乗り入れ禁止との看板はあるが、規制されていない。石狩市は規制が強いので、規制の緩いオタルの方に来ているのかなとも思える」。
 このほか、銭函4・5丁目の湿地に棲む動植物や、日本最大のカシワ海岸林についても触れた。
zenibako4-5-2.jpg 「新川河口にある小樽内川跡は、小樽という地名の語源”オタルナイ(砂の中を流れる川)”だが、残念ながら看板などがない。看板ぐらい立てておけば良いのにと思う。この湿地には、ドクゼリという湿地植物があり、これは日本三大有毒植物で、すごく毒が強力で死亡例もある。食べないように気をつけて下さい。小樽でゲンゴロウが見られるのは、ここの場所だけ。砂丘の内陸には広大なカシワ天然林が広がっているが、一回も伐採が入っていない天然の森」と紹介した。
 最後に、「たくさんの動植物が生息する銭函4・5丁目は、鳥の観測にも良い場所。珍しいキノコもあり、非常に面白い。この場所を調査する人や研究者、写真家たちには有名な場所で、大学の調査のフィールドにも使われている。新川河口にある小樽内川跡は、アイヌの人たちがオタルナイと名前をつけた当時の姿が残っている。こんな幸せなことはない。
 車が捨てられたり、ゴミのポイ捨てもあとが絶たない。色々な開発が進んでいるが、石狩湾新港の開発で変わり、これからも様々な開発で変わってしまうだろう。貴重な動植物がいると知った上で開発を行うのか、知らないでやるのかでは意味合いが全然違う。この調査は、とても意義のあることだと思う。今後も調査を続けて情報を発信したい」とまとめた。
 会場に集まった市民約50人は、小樽市の東端にあたる銭函4・5丁目の豊かな自然環境と貴重な動植物について熱心に聞き入っていた。
 関連記事1 関連記事2 関連記事3
zenibako4-5-3.jpg
zenibako4-5-4.jpg