運河周辺の石造建築  20年で57件が消滅 帝国データバンク


 「小樽の街づくりで重要なポイントのひとつは、古いものをいかに上手に生かして使うかにあります」。
 10月21日(水)、株式会社帝国データバンク札幌支店情報部は、小樽運河周辺の石造建築物が、20年前には176物件あったうち57物件が消滅したと発表した。
 これは、1989(平成元)年に、小樽の経済人たちが集まって興した株式会社環境開発(山本信彦社長・小樽倉庫株式会社社長)が乗り出した実態調査に基づいている。
 「斜陽といわれた小樽市が観光小樽に変身できたのは小樽運河の存在とその周辺に建てられていた石造建築物の再活用により集客力を高めたことにほかならない。しかし、今から20年前、バブル経済が始まった頃は、小樽の歴史を映した貴重な倉庫を中心とした石造建築物がバブル資金を活用した外部資本に買いとられ解体されていく実態も散見された」と、当時の帝国データバンク小樽支店が、176物件の現状や所有者の意向などの実態把握を行った。
 20年前の調査では、運河周辺の港町・色内・堺町・有幌の4地区に、倉庫が95件、店舗31件、企業事務所21件、工場・加工場10件、銀行・公共施設6件、個人自宅付属倉庫13件の計176件となっていた。この結果は、「小樽石造建築物調査報告書」として発刊され、関係団体などに贈呈された。
teikokubank.jpg 今年、発刊から20年経過したこを機に、20年前に同調査を行った札幌支店情報部員の加藤武雄さん(65)が、たった一人で176の物件の現地再確認を行った。
 「物件が存在しているか、解体されているか」。「存在している場合、利用形態は20年前の利用形態そのものか、再活用され利用形態が変化しているかどうか」。「再活用されている場合、その業種・業態はどのようなものか」。「店舗として活用されている場合はその業種」の4項目について調査した。
 この結果、176物件中57件が消滅したことが分かった。現存する119物件は、20年前と同一使用者で、ほとんど同一業態で利用していたのは64件だった。20年前に倉庫だったものが新業態で再活用されている建物は48件で、使用されていない建物は7件だった。
 再活用された48件のうち、店舗としての利用が38件で、堺町地区では22件全てが店舗利用となっている。レストラン・食堂・喫茶店が12件、菓子・土産品販売12件で、20年前は北一硝子以外、数少なかった硝子製品の販売店が10店に増加しているの特徴としている。解体された57件の状況は、駐車場が18件で30%を占めた。
 「この背景としては、基本的に運河周辺地区で駐車場の絶対数が不足していたこと、ホテルやマンション建設などで更に駐車場需要が高まったことがあげられる。個人住宅については、もともと住宅に隣接していた小規模な倉庫(物置)を住宅改築に伴って解体したケースがほとんである。ガソリンスタンドも車での観光客増加に対応したものと考えられる。総じて街の流れの中で必然的に生じたケース、建物寿命などによるものがほとんどである」とまとめている。
 加藤さんは、「この結果が良いとか悪いとか言う仕事ではないが、このまま石造建築物が無くなったら町並み保存が危ないと思う。再活用、再利用された建築物はほとんどが外部資本で、地元資本の企業にも頑張って欲しかった。そこが寂しいところでもある」と話した。
 この調査の際に176件の建物の写真を撮影しており、加藤さんは、市に寄贈することにしている。
 株式会社帝国データバンク