北海道史研究のパイオニア河野常吉展 小樽文学館

 市立小樽文学館(色内1 ・玉川薫館長)は、特別展「河野常吉-北海道史研究のパイオニア」を、12月5日(土)~2021(令和3)年1月31日(日)に開催し、北海道史をはじめとする、道内各地の歴史書の執筆に代表される河野常吉の業績を紹介している。

 

 北海道立図書館・北海道立博物館・市立小樽図書館所蔵の資料や、遺族から集めた同氏着彩の石狩国上川郡アイベツ原野区画図(明治28年)など、貴重な資料を展示紹介している。

 

 同氏は、1862(文久2)年に長野県東筑摩郡島内村(現松本市)の学者の家に生まれ、同県師範学校松本支校を卒業後、満16歳で西筑摩郡福島学校で教師に。その後改めて慶応義塾で学び、鉱山分析・新聞編集・測候所所長に就任。

 

 1894(明治27)年、31歳で北海道に渡り道庁の嘱託として、1902(明治35)年12月まで任され、北海道殖民状況調査に関り、未開の原野と森林が広がる道内各地や、千島や樺太まで足を運び、様々な調査に基づく記録を残した。

 

 開道50周年記念事業として「北海道史」の執筆に携わり、古文献の分析、古老からの聞き書き、開拓地に関する統計記録、庶民の風俗文化に至るまで膨大な草稿を残した。考古学と民俗学の方面でも活躍し、遺跡の発掘調査も行った。

 

 1921(大正10)年から小樽区から小樽市史の編纂を嘱託され、1922(大正11)年から作業が開始し、小樽市史の土台となる多くの資料を書き上げた。小樽図書館初代館長を務め、小樽にもゆかりが深い。

 

 会場には、1922(大正11)年8月に撮影した忍路の環状石籬の写真と裏面の同氏直筆の解説文、1880(明治13)年の弁慶号試運転写真(入船町陸橋を通過する)、銭函小樽間道路建築なども紹介。

 

 担当の亀井志乃学芸員は、「自分の目で見て確かめることをベースに、いろいろな記録や本を残したが、あまり知られていないのはなぜでしょう。北海道や小樽を知ることができるのは、同氏のまとめた資料があったから。

 

 北海道の歴史・自然史に関して調べる上で、一度も河野氏の資料にあたらない人はいないと言われるほど凄い人。開墾の手が入った間もない時に、根室では原野を耕している頃、先住民の家に泊めもらたり、足を傷つけ腫らしたりして全道を歩いた。松浦武四郎に匹敵するほどの人だと思う。特別展をぜひご覧いただきたい」と話した。

 

 特別展「河野常吉-北海道史研究のパイオニア」

 12月5日(土)~令和3年1月31日(日)

 入場料:一般300円、高校生・市内70歳以上150円、中学生以下無料

 1月11日を除く月曜日、12月29日(火)~1月3日(日)・12日(火)・13日(水)休館

 市立小樽文学館(色内1)

 

 特別講座「一歴史研究者から見た河野常吉」 12月20日(日)14:00〜16:00

 北海道博物館・山田伸一学芸主査

 同館1階研修室 参加無料・要予約0134-32-2388

 

 ◎小樽文学館HP(外部)