アイヌ文化や伝統を再認識 小樽市総合博物館で工芸品展

 

 

 小樽市総合博物館本館(手宮1・石川直章館長)が主催し、公益財団法人アイヌ民族文化財団・石川県立歴史博物館共催の、2022小樽市制100周年記念事業令和4年度アイヌ工芸品展「アトゥイー海と奏でるアイヌ文化」が、12月3日(土)から2階企画展示室で開幕した。

 

 北海道内の豊富な民俗資料等200点を展示し、石川県を中心とした北陸地方にある工芸品などから、広く海とアイヌ文化の密接な関わりを紹介している。

 

 9:00から開かれた開会式で、小樽市教育委員会・林秀樹教育長は、「アイヌ民族の幅広い暮らしの中でも、ここ小樽の育んできた海・アトゥイは、この展覧会をより意義深いものにしている。豊富な資料や北前船を通じた貿易関係でも、大変結びつきが深い北陸地方にある工芸品を紹介している。ぜひ多くの皆さんに御覧いただきたい」と挨拶した。

 

 同財団・常本照樹理事長は、「アイヌ工芸品展は、アイヌ文化振興事業の一環で、全
国各地の博物館と共催の形で協力を得て毎年開催し、小樽市では3回目となる。

 

 アトゥイはアイヌ語で海を意味し、本展覧会では、アイヌ民族の主な居住地である北海道・樺太・千島列島を取り囲む広大な海をテーマとして、アイヌ民族と海との深い関わりを紹介している。

 

 海は外の世界と繋がる道でもあり、特に小樽市は北前船交易の重要な港として、北陸地方と交流の歴史のある地域。北前船に乗って往来した資料を数多く展示している。海を介して北海道と北陸地方との繋がりについて感じてもらいたい」と述べた。

 

 北海道環境生活部アイヌ政策推進局象徴空間担当・髙石浩子課長、鈴木喜明小樽市議会議長、駒木定正小樽市総合博物館友の会会長、常本理事長、林教育長でテープカットを行い開幕を祝った。

 

 担当の菅原慶郎学芸員による解説が行われ、来館者約30名は解説を聞きながら観覧した。

 

 アイヌ民族は、危険を伴う海上での生業にあたって祈りを欠かさず、海に恵みを受けながら、大陸や本州と接触、交渉をもとに豊かな文化を発展させてきた。

 

 本展では、海をキーワードに、(1)生きる・(2)恵み・(3)祈る・(4)つながるの4つに分けて展示紹介し、それぞれの物語と現代に生きる様子も紹介している。

 

 (1)海に生きるでは、特徴のある大型の舟や、大型の魚類を捕獲する複数のカエシが付いた鉄製の銛など、様々な道具を展示。

 

 (2)海の恵みでは、陸上の生活を紹介し、海の恵みは余すことなく生活の様々な場面で利用し、食料はもちろん、靴や毛皮、アザラシやトド類の脂肪から抽出した油を入れたトドの長い食道部分、ホタテ貝やホッキ貝などを使った杓子やホタテ貝の鍋など道具などを展示。

 

 (3)海に祈るは、信仰の世界を紹介。ポスターにも掲載している冠は、戦前に日高地方で収集されたもので、ブドウツルで編んだ本体にアオザメの上あごと下あごの歯茎ごと2段に重ねたもので、儀礼の際に男性の正装としてかぶる冠として使用した。

 

 (4)海とつながるでは、北陸地方との繋がりを紹介、北前船を通じて行き来した物などを紹介している。1808(文化5)年、タカシマ(現在の小樽市高島・祝津地区周辺)におけるアイヌ民族の暮らしを描いた絵巻物を展示している。

 

 作者は、徳川幕府の役人の井上貫流左衛門で、21枚で構成されアイヌの生活が描かれ、板綴じ舟や男女が水泳する様子、ムラサキウニとバフンウニを勧められて食し、美味しさに感動したことなどが書かれている。

 

 同館では、2010(平成22)年7月に「アイヌー美を求める心」、2013(平成25)年10月に「ロシアが見たアイヌ文化」を開催し、今回3回目となる。菅原学芸員は「小樽のゆかりのある資料を、ぜひご覧ください」と話している。

 

 令和4年度アイヌ工芸品展「アトゥイー海と奏でるアイヌ文化」

 小樽市総合博物館(手宮1)本館エントランス、企画展示室

 12月3日(土)〜2023(令和5)年3月5日(日)9:30〜17:00

 火曜日・年末年始休館 要入館料

 

 ◎小樽市総合博物館企画展(外部)

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