坂上安樹子さん初個展 津軽こぎん刺し作品展開催

 小樽在住の坂上安樹子さん(72)が、5月1日(月)~3日(水)にえきまえギャラリー(稲穂2)で人生初の個展となる津軽こぎん刺し作品展を開き、初日から手芸好きの女性たちで賑わった。

 

 会場には、魔除けの意味がある刺し方をあしらった初期に制作した甚平や大きなタペストリー、帯やバッグ・アクセサリーなどの小物まで、高校時代にこぎん刺しに出会って45年間で作り上げた作品が、処狭しと展示されている。

 

 こぎん刺しは、明治の頃、青森県津軽地方の貧しい農民が、厳しい冬に備え、麻を刈って機を織り、麻の隙間を木綿糸で埋めたのが始まり。

 

 同地方に伝わる刺し子の技法のひとつで、保温と補強のために野良着に刺し子し、野良着のことをこぎん(小布・小巾)と呼んだため、この名前がついたと言われ、伝統工芸品として、博物館に大切に展示されている。

 

 その魅力は保温性と丈夫さに尽きるといい、何度も洗うことに耐え普段使いができる。使いこむほど生地と糸が一体化し、幾何学模様がさらに美しくなるという。

 

 一般的には、青い麻布に白い木綿糸で刺しているが、現在は、いろいろな素材に色彩豊かな糸を使い、多様性・対応性のある幾何学的模様の美しさは、現代デザインに通じる力があるという。

 

 坂上さんは、和裁をしていた母の背中を見て育ち、自分でももの作りが好きで、高校時代にこぎん刺しに魅せられ独学で続け、専門誌を取り寄せて知識を広げ、バラエティに富んだ作品作りを楽しんできた。常日頃、針を持って何か作っていられることが、ストレス解消にもなっているという。

 

 20年前に、市内で髙橋真理子さんが講師を務める小樽こぎんの会に入会し、月1回、20名ほどが集まってこぎん刺しを楽しんでいる。

 

 今回の巨大なタペストリーは、こぎん刺しとフランス刺繍を施した布とパッチワークにして繋げ、1年かけて完成させたもの。

 

 母の形見の着物地を活用して、こぎん刺しの部分をパッチワークして熊のぬいぐるみを作り、抱えている籐の籠は、わざわざ籐工芸を習いに行き手作りしたものを使用。何個も作り、孫にプレゼントしてとても喜ばれているという。

 

 弘前出身の髙橋講師は、姉がやっているこぎん刺しを見て興味を持ちこの世界へ。小樽に移住して、生涯学習プラザで講座を持ち、参加した生徒が講座終了後も続けたいと小樽こぎんの会を立ち上げて現在に至る。

 

 坂上さんは、「幾何学模様が、現代の物と合わせやすく、飾るものよりも普段に使えるもので、ポーチなどに施し使ってもらいたい。こぎん刺しを皆さんに知ってもらいたい。

 

 母親が和裁をしていたので糸が沢山あり、伝統工芸品の加賀の指ぬきも始めた。さらに作品を増やしたい」と笑顔で話した。

 

 津軽こぎん刺し作品展 5月1日(月)~3日(水)10:00~17:00(最終日16:00)

 えきまえギャラリー(稲穂2 駅前第1ビル1階) 入場無料