外沢照章能面展 能面彫り特別実演


noumenten1.jpg 第14回外沢照章能面展が、7月31日(火)~8月5日(日)に、小樽市公会堂で開催され、能楽堂を眺めながら能面の世界に触れられ、注目を集めている。
 昨年の同所での個展以降に制作した「頼政」など、5点の新作を含め44点の能面を展示している。
 モデル面(木地仕上げ品)も多数陳列し、来場者は、外沢氏の解説を聞きながら、改めて能面の奥深さを感じていた。
 10回目を記念して、31日(火)と8月1日(水)の10:00~12:00は、特別企画を用意。同氏が解説をしながら能面彫りを実演。嘘吹(うそふき)と重荷悪尉(おもにあくじょう)の進行状況が違う面を見せながら、作業工程の説明や面に纏わる深い話をした。
noumenten2.jpg 初日は、実演の様子を一目見ようと、開始時間より早く訪れた人もいて、市内の写真愛好家や大学生らが、同氏を取り囲んだ。
 同氏は「どんな物語に使われているかを考え、表情を出せるように仕上げる」と話し、小面を手に取って、「前かがみで中間の表情、上向き加減で喜び、下向きが悲しみの表情を出せるよう面を作る。10・15年経つと分かるようになり、時間の掛かる仕事」と語り、普段使用している道具を使って、削ったり目をくりぬいて見せたり、初めて見る光景に、来場者はじっと見入っていた。
 新作の中で、満足できる仕上がりのひとつ「天女増」は、「増女とは、小面と対照的に頬肉を引き締めた相貌をし、他の面と比べても優しい表情を浮かべている」と解説。
 違いを比べられるよう、隣には、同じ増女の仲間である「節木増」を並べたという。
noumenten3.jpg 5月から同会場で設置している中にも、今年1月に完成した翁の「父尉」(ちちのじょう)は、翁系4種類(白式尉、黒式尉、延命冠者、父尉)のうちのひとつで、梵天眉(ぼんてんまゆ)にウサギの毛を使用している。翁系は、五穀豊穣などの神聖な儀式として使われ、下顎が切り離してある切り顎が特徴。
 能舞台が見える会場は、さらに、能面の世界へ誘い、来場者は、ひとつひとつ丁寧に、鑑賞していた。
 同氏は、1942(昭和17)年東京生まれ。建具職人の父親のそばで、子どもの頃から木を削って遊んでいた。父親が亡くなった時に使用していた突ノミなどを譲り受け、1978(昭和53)年の「別冊太陽」に掲載された能面と出会い、42歳の時、近くの能面教室を訪問したことが始まりとなり、能面を打ってから34年が経つ。
 2003(平成15)年に小樽に移住し、今年で14年目となる。2006(平成18)年に初個展を、2009(平成21)年からは、公会堂で毎年開催し、夏の時期の恒例行事となった。
noumenten4.jpg 能面250種類のうち、基本形92種類の7つのカテゴリー(翁系・鬼神系・尉系・男系・女系・怨霊系・狂言系)をまんべんなく打つことを目標に、今回の新作は「頼政」「真角」「大喝食」「天女増」「父尉」の5点を発表。新しい2種類の面を合わせると、今回で70種・95点を製作したことになる。
 1年間かけて5つの面を完成させた。5月になってから色付けを行い、髪の毛の1本ずつを、息を止めて手描きする。筆書きが作品の良し悪しを決定させる大事な作業となり、描かれた髪の毛からは努力が滲んでいる。皮膚の色も影を入れたり、隅々まで繊細な工程となる。
 「面は、それぞれ物語を持っている。能は曲の内容に合わせて面を使う。能面を制作して34年になるが、後半になって、面に対する物語性を重視して彫るようになった。その面に対する彫りや彩色、運命等を良く理解して、彫った作品を観ていただきたい」と話した。
 第14回外沢照章・能面展 7月31日(火)~8月5日(日)9:00~17:00
 小樽市公会堂(花園5)地下展示場 入場無料
 作家会場待機時間10:00~12:00・14:00~17:00
 外沢照章・能面ギャラリー日記
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