2006年 ベストマスター

2006年12月のベストマスター
木の工房 るか

古川 節男マスター

 小さなフクロウ2匹がちょこんと座ったフクロウ時計やキノコ時計。カボチャやトマトの表札。彫り手のやさしさが溢れ出た木彫り作品の数々。

 JR小樽駅隣の船見坂を少し登った工房兼自宅のギャラリーには、ユニークな木彫り作品が並ぶ。見ているだけでも人にやさしさと安らぎをもたらしてくれる。

 木彫り作家の古川節男さん(48)は、隣町の余市出身。実家に縛られたくないと、東京や札幌へ。札幌で木彫りの世界と出会い夢中になる。技術を身につけようと修行に励む。

 勤務先の集まりで、妻のゆかりさんと知り合って結婚。定山渓に引っ越し、自分で工房を開く。しかし、冬の定山渓は思いもよらなかったほど厳しく、下界に降りようと小樽での生活を始めた。

 小樽に移り住んですでに11年。ユニークな木彫り作品も北海道物産展などで人気を呼ぶようになり、今では全国に広がっている。

 仕事の息抜きに小樽市内を散歩することが趣味。小樽の街は、季節が変わると違った表情を見せるのでそれが面白く、毎日、小樽の街をうろついている。気に入った写真を撮るとブログにすぐに掲載する。

 「小樽はマンションが次々に建ってしまい、海が見えなくなって随分変わってしまった。10年前はもっと活気もあったが、マイカルが出来てから市街にはシャッターが下りてるところが目につくようになり、今は更地が多い。小樽は本当に良いところだから、もっともっと活かれせばいいのに」と、小樽の街の衰退を嘆く。

 職人技が光るマスターは、小樽ライフを仲良し夫婦でエンジョイする自由人。メガネの奥の視線がどこまでもやさしい。

2006年11月のベストマスター
飯・酒・珈琲処チャランケ

諸田 米満マスター

 ジャズやロックなどの音楽と食と酒を楽しめる、音楽居酒屋チャランケのマスター。

 音楽が大好きなマスター(52)は東京出身。音楽に出合ったのは19歳の時。「落ち込んでいる時に上野のジャズ喫茶に入って元気が出て、急にドラムを叩き出したんだ」

 フリージャズバンドで活動したり、絵を書いたり、詩を投稿したりして生活していたが、それでは食っていけないとサラリーマンに。

 北海道には27年前に訪れた。東京に戻ってからも北海道の縁は切れず、飲み屋を開きたいという夢があった。昨年4月に脱サラして小樽の街に移り住み、6月にチャランケをオープンさせた。

 石造り倉庫を利用した建物の店内には、カウンター席とテーブル席、そして、「ライブをやりたい人や何か表現したい人などの応援する場でありたい」と、2階は演奏ステージ兼ギャラリーとしても利用出来る。店内には1,500枚ものレコードを並べ、オールジャンルのBGMを流している。

 飲むことが大好きで、小樽の観光名所には行ったことがなく、小樽で知っているところといえば花園ネオン街。「結婚はしなくても良いと思っていたけれど、最近になって、1度くらいはしても良いかなと思い始めたんだ。募集中です」とニッコリ。

 「地元に好かれるような店でありたい。もちろん観光客の人に来てもらえれば、もっと嬉しい。2階は貸切で利用出来ますので、大勢の人たちに利用してもらいたい」と、地元客と観光客を笑顔で迎えている。

飯・酒・珈琲処チャランケ

営業時間17:00~25:00(日曜定休)
小樽市稲穂2-13-17
0134-27-6601

お店のHP
2006年10月のベストマスター
無国籍料理 Food&Bar MONIKA

岩沢 武弘マスター

 小樽市内公園通りと花銀通りの交差点にある無国籍料理Food&Bar「MONIKA」(モニカ)の店長。イルカとブルーで南の島をイメージした装飾の同店では、年令を問わずスタッフとの会話を気軽に楽しむことが出来る。

 カウンターでカクテルを作り、客との会話を弾ませる岩沢武弘店長(28)は、180cmの長身で、笑顔の素敵なイケメン店長。

 新潟生まれで、小樽商大入学と同時に小樽で一人暮らしを始めた。小学校はサッカー、中学校はバスケ、高校はテニス、大学はボートとスポーツ万能だ。大学2年生の時にボート部を辞め、イタリアで2ヶ月間、ボランティア活動に精を出した。帰国後、友だちの紹介でMONIKAでアルバイトを始めた。

 「MONIKAは、チェーン店のようにマニュアルに頼るわけではなく、お客さんと顔を合わせて仲良くなって接客するというのがすごく楽しかった」

 大学卒業と同時に札幌でサラリーマンになったが、サラリーマンは合わなかったと1年で退職し、MONIKAで正社員として再スタートした。

 今年7月に店長となり、「今までは正社員で、仕事を頑張って売上げを上げることだけを考えていたが、店長になってからは、スタッフやアルバイトの子たちのことも考えなければいけなくなり、責任の重さを痛感した。小樽で生まれたわけじゃないけれど、この街が好きだから活性化させたい」と、接客サービスに励む。

 学生の頃は何かあれば宴会をしていたという店長は、学生のコンパや宴会も低価格で済むようにと、夜の宴会プラン(飲み放題付)を3,000円から用意している。2時間の貸切(30人から)もある。

無国籍料理 Food&Bar MONIKA

営業時間17:00~4:00
日曜日~24:00・水曜定休
小樽市花園3-2-1
0134-32-0843

お店のHP
2006年9月のベストマスター
小樽倉庫NO.1

川田 隆マスター

 今年3月に小樽倉庫NO.1に着任した川田隆店長。色々なイベントを企画して小樽を盛り上げたいと、ききビール大会やウェディングプランなどを用意する。

 川田店長は東京亀有出身の39歳。アレフのびっくりドンキーでは店長として勤め、本社(札幌)ではキッチントレーナーという接客のマスターだった。「なんたって現場で働くのが一番好きだね。肉体的に辛いこともあるが、お客さんに元気づけられ、従業員に支えられて成り立つ」とニッコリ。

 小樽ビール発祥の地、小樽倉庫NO.1で働くことになり、これまでビールとは縁がなかったが、「ビールのことはまったく分からなかった。しかし、小樽ビールを飲んでから、ビールに対しての考え方が変わった」と、今ではかなりのビール通。3種類ある小樽ビールのうち店長のおすすめは、苦味がなくコクがあるドンケル。

 休日はゴルフで汗を流し、ビールをくいっと飲む。やっぱり生が美味しいと、自宅には小樽ビール専用のサーバーもあるという。

 「小樽に来た時、雰囲気が地元亀有に似ている街だなと思った。近所同士が仲良く、地域の団結が強い」と、潮まつりなど小樽でのイベントに参加しており、これからも小樽を盛り上げたいと意欲を燃やす。

 これからは、従業員のスキルアップや良いサービス、良い商品を目指す。「店は生き物と思っている。ひとつひとつきちんと対応していかないと腐っていってしまう。日々その対応に追われているのが面白い。まだまだ課題もある」と、ビールグラス片手に微笑む。

小樽倉庫NO.1

営業時間 10:00~23:00 年中無休
小樽市港町5-4
0134-21-2323

お店のHP
2006年8月のベストマスター
Cotton Cloth(コットンクロス)

野口 芳雄マスター

 小樽市役所庁舎から約5分。昼はランチセットを中心に、夜はワイン&ビールと洋風酒肴で食事もOKのビストロスタイル。落ち着いた店内で、道産の肉や港町小樽ならではの新鮮な魚料理を提供する、Cotton
Cloth(コットンクロス)のシェフ。「食べ物屋は、一番早く人を幸せに出来る」と、自宅で洋食屋を営む野口芳雄シェフ(51)。

野口さんは大学を中退し、スパゲッティ屋「叫児楼」で修行を始めた。その後、友達同士で会社を立ち上げ、ジャズのライブハウス・映画館など、何件もの店を抱えていたこともある。「当時は忙しかった。だから、家族連れのお客さんがゆっくり出来て、ホッとするような店をやりたい」と現在に至る。

「若い時には戻りたくない。同じ苦労はしたくない。間違って明日死んでも悔やむことはなく、ちゃんと年をとっていきたい」と、蓄えた口髭とあごひげがニッコリ笑う。

今はない雑誌「ふぃえすた・小樽」の小樽・八十円紀行という特集の記者をしていたこともある。80円バスで小樽の色々なところに行って遊んで取材した。生まれ育った小樽が大好きなシェフ。時には雪のない天狗山でスキーを担いで写真を撮ったこともあるという。

同店のおすすめは日替わりランチ。890円(税込)のピラフ・ピザ・スパゲティ。どれもこれも道内産の材料を使用しており、シェフの愛情とこだわりがたっぷりと注がれている。

「やっぱり自分に正直な味を否定されたら仕方ないと思う。人に合わせることをやると、自分が壊れてしまう、小さな店だから言えるわがままもある」と自分の味にこだわりを見せ、毎日腕をふるう。テレビにも取り上げられる有名店で、その日採れたてのバジルなど生きた食材を使い、最高の料理で客をもてなす、小樽花園のこじんまりとした洋食屋のシェフ。

Cotton Cloth(コットンクロス)

営業時間
平日11:30~14:00、18:00~23:00
日祝12:00~20:00(月曜定休)
小樽市花園4-18-3
0134-27-2959

お店のHP
2006年7月のベストマスター
ビストロ小泉

小泉 彰マスター

 「小樽の山・海・坂が好き」とニッコリ笑う。旧丸井今井の並びにある、昔ながらの洋食レストラン「ビストロ小泉」(稲穂1)のマスター。

 昔の小樽は貿易港で栄えていて、洋食レストランが多かったという。「こういった店が小樽から無くなると、小樽はダメになってくる。だから小樽を活気づけたいと、この店を続けている」

 小泉さんは小樽入船出身の50歳。桜陽高校を卒業し、「東京に出て成功しよう」と、東京の美大に進学した。舞台照明やCMの美術部門などのアルバイトで学費を稼いだ。

 大学を中退し、立体アニメーション作家の下で助手を経験していた。「ゆくゆくは小樽に戻って喫茶店などのような店を開きたいと思っていた」

 24歳で小樽に戻り、スパゲッティ屋「叫児楼」で修行を始めた。将来の自分の店の候補地を探しながら、「叫児楼」の代表を任され、1日300人もの客を捌いていたという。

 1990年3月、念願が叶い、「ビストロ小泉」をオープン。「小樽にはたくさんの洋食レストランがあったから、それを無くしたくないのが生き甲斐でやってきた」と、この熱意が雑誌などに何十回も取り上げられるようになり小樽の有名洋食レストラン店に。

 小泉さんが作るスパゲッティには、昔懐かしい味と愛情がふんだんに注がれている。そして、小泉さんが「余計な味を取り除いてきた」と、約20年間常に工夫してきた、タケノコとキノコが入ったハヤシライスは絶品で、評判が高い。ビストロ小泉といえばハヤシライスと言われるほどに。

 店内は、小泉さんがデザインした内装や木のテーブルとイスを揃え、時間が経てば経つほど味が出るように、小樽が栄えていた時代の雰囲気を思い出させる工夫がされている。

 「店をやってきて辛かったことはなかった。やろうと思う目標があれば辛いことはない。だからこの店が出来たんだ。これが僕の財産だ」と毎日腕を振るう。

 伸ばしたヒゲとメガネの奥からの優しい目線の人なつっこい笑顔が、人の良さを感じさせる。ビストロ小泉のヒゲのマスター。

ビストロ小泉

営業時間11:00~14:30、17:00~22:00 (水曜定休)
小樽市稲穂1-7-10
0134-32-4965

2006年6月のベストマスター
cafe RilNO

大沼 清澄マスター

 「小樽には、海、山、美人が多い。美味しい食べ物がある。大好きな街だ」。心と身体に優しいケーキと美味しい時間を贈る「cafe RilNO」(最上1)のマスター。

 小樽市入船町出身。45歳。北照高校時代から喫茶店でアルバイトを始めた。「当時、小樽には山のように喫茶店があった。おもしろかった。本当にいろんな店があったな」と学生時代を懐かしむ。

 高校卒業後、札幌の学校に行きながら昼も夜も接客業に。「10年くらいは色々な場所で働いたな。でも、やっぱりこの商売が好きなんだと実感するよ」と、旧マイカルのカフェで店長としても勤めた。

 マイカル撤退をきっかけに「もともと店を出せたら良いねと貯金はしていた」と、妻・真澄(38)さんと店を持つことを決め、2003年6月にオープン。

 「こういう商売だから仕方はないが、昨冬と今冬の2年連続の大雪には参ったね。場所がら雪も多いから、交通の影響が大きかったな。それに雪が降ると、人はあまり外に出ないでしょ?北国の悲しさかな。それでもお客さんが来てくれるから本当にありがたい」と、カウンターに座る女性客に微笑む。

 「cafe
RilNO」では、「子供が食べても安心出来るように、保存料やベーキングパウダーなどの添加物を出来る限り使用しないものを意識して作っています」という、真澄さんの優しい気持ちが込められたケーキが人気となっている。

 若い女性客から男性客まで「ケーキやパンを食べに来て、無駄話や息抜きに寄ってくれる」と、幅広い客層に美味しい時間を提供する「cafe RilNO」のマスター。

cafe RilNO

営業時間12:00~20:00
土曜日~21:00・水曜定休
小樽市築港5-2
0134-24-2238

2006年5月のベストマスター
小樽ビール銭函醸造所

ヨハネス・ブラウンマスター

 世界でたった1,000人だけしか持つことが出来ないブラウエンジニア(醸造責任者)の資格を持ち、ドイツブルワリーのブラウン家に250年も伝わる製造技術を継承する“小樽ビールの製造者”。

 ブラウンさんはドイツ出身の38歳。家系は、代々ビール製造に携わり、高校卒業後にビールの大学へ進学。ビールとビール工場での製造法を勉強し、23歳でブラウエンジニアの資格とともに卒業。卒業後、ドイツの工場で働き、25歳の時ギリシャに工場を建てた。

 株式会社アレフ(札幌・庄司昭夫代表取締役社長)から、「ドイツのビールを造ってもらいたい」との要望があり、北海道内の水を調べ、小樽の水が一番ドイツビールを造るのに適していると1995(平成7)年に来樽。小樽運河沿いのレストラン「小樽倉庫No.1」(港町5)に工場を持ち、小樽ビールの製造に取り掛かった。

 芳醇な香りとまろやかな苦みの「ピルスナー」、カラメルフレーバーとほのかな甘みの「ドンケル」、バナナのようなフルーティな香りの「ヴァイス」の3種類を開発し販売。観光客や地元客からの支持が増え、レストランの工場では製造が間に合わないと、現在、銭函に大きな工場を建てた。

 ブラウンさんは、「ドイツビールの味のバラエティーを知ってもらいたい。ドイツには、ビールだけで何千種類もある。小樽では、ドイツのビールの文化・飲み方・楽しさを分かってもらい、ビールと一緒に楽しむ時間を知ってもらいたい」と、小樽ビール見学会や工場祭りなど様々なイベントを用意する。

 「小樽ビールが50年、100年と残るような元気なものであってほしい」と、ビールを愛し、小樽でドイツビールを造り続ける本家本元のビールマスター。

小樽ビール銭函醸造所

受付時間9:00~17:00(土・日定休)
工場見学10:00~18:00
小樽市銭函3-263-19
0134-61-2280

お店のHP
2006年4月のベストマスター
JUNSAN'S BAR

東山 純一マスター

 稲穂1丁目の一角にあるバーJUNSAN’S BARのマスター。フィーリングに合わせて、ロックやブルース、JAZZを流す。音楽狂のマスターの洒落た感覚が店内に漂う。

 手宮出身で、末広中、商業高校と小樽で学生時代を過ごした後、札幌の体育専門学校へ通った。プロレスラーを目指して、1日1,000回のスクワットに精を出す。

 20歳の時に剛竜馬のもとへ弟子入りしたが、「体格が違いすぎ」と、約1年後に小樽へ帰って来た。スポーツが得意だったので、スポーツインストラクターの仕事に就いた。

 「本当は29歳の時に店をオープンしたかった」と話す。「アントニオ猪木が新日を設立したのが29歳だから、俺も店開くのは29歳の時にって思っていたんだ。だけど、1999年の29歳の時は、世界中がノストラダムスの大予言の話題で、もし予言が的中して、オープンしたばかりの店がすぐに崩れてしまうのは嫌だったので」と、2000年の30歳の時にオープン。

 料理の腕前はプロ級。学生の頃からアルバイトした飲食店は数知れず、履歴書には書ききれないと話す。

 客の好みに合わせ、まな板の音を響かせ、フライパンでさっと作り上げる。「お客さんは、飲みに来るってよりも食べに来ているかもね」と笑って話す。カウンターに座る客は「ここはね、食べたい物を言えば、次に来た時には必ず用意してくれるし、なんたって、あるもので何でも作ってくれる」と酒と箸がすすむ。

 マスターが小樽で営業するのは、「幼い時から小樽の山を歩き、山菜などを収穫する感覚だ」という。目を輝かせて、「田中まことというブルースの中で超有名な人が、うちに年2回も来ているんだよ。これ聞いてよ」と、鼻高々に話す。チャージやチャームはなしで、安く飲んで、いい音楽を聴いて、お腹がすいたらおいしい料理が出てくる、JUNSAN’S BARのマスター。

JUNSAN'S BAR

営業時間19:00~お客さんが帰るまで(月曜定休)
小樽市稲穂1-9-11
090-3893-8346

2006年3月のベストマスター
沙羅衣

畑野 天秋マスター

 小樽駅前にある小樽中央市場第3棟(稲穂3)で、新たにチョコレート専門店「沙羅衣」を平成18年2月1日にオープンさせたマスター。

 「幼少の頃、両親が商売していた場所が砂川市の“中央市場”で、“中央市場”という名前に愛着があったから、この場所にオープンしたんだ」というマスターは59歳。

 札幌で企画開発会社「紗羅衣コーポレーション」の代表取締役でもあるマスターは、70%以上のカカオを含むビターチョコレートにこだわる。

 チョコ専門店を経営するマスターは、父親の成功する姿や失敗する姿などを見てきたため、「商売は嫌い」と断言するが、結局、商売が嫌いで違う道を選んだはずなのに、同じことをしている。不思議なものだね」と苦笑いする。

 企画開発会社で、九州の百貨店で「北海道のバレンタイン」という企画のため、道内のチョコレートを集めることになった。ビターチョコレートの板チョコは見つけられず、「見つけられないのなら自分で作ってしまえ」と、同社で開発に取り掛かったという。

 70%以上のカカオを含むビターチョコレートの製造にあたり、「色々大変だったんだよ。70%も含むと苦くて」。砂糖などを綿密に調整し、完成したチョコレートは、カカオ72%のビターチョコレート140g(683円・税込)と110g(525円・税込)、まろやかで身体にやさしい。「少し高値になるけれど、食べてもらえばその良さを分かってもらえる」と自負する。

 マスターは、木彫の職人でもあり絵描きでもある。中央市場にオープンした店の「沙羅衣」と彫られた木製の看板もマスターが作成、製造したビターチョコレートのパッケージの絵も自分で描いた。銭形アザラシ・蝦夷オゴショ・モモンガ・リスの4種類で、すべて鉛筆や水生ペンでデッサンしたもの。

 「小樽の市場から、この板チョコが広がってくれれば」と、小樽中央市場から全国に向けてビターチョコレートを販売。北海道では小樽以外では販売されない。カカオ70%以上、小樽中央市場での販売にこだわる、チョコレート専門店「沙羅衣」のチョコマスター。

沙羅衣

営業時間11:00~17:00(日曜定休)
小樽市稲穂3-11-3
0134-27-4111

2006年2月のベストマスター
美園アイスクリーム店舗 アイスクリームパーラー美園

漆谷 匡俊(うるしや ただとし)マスター

 大正ロマン時代から現在まで、アイスクリームの香りとともにノスタルジアと思い出を売る、小樽美園アイスクリームの3代目マスター。1919年(大正8)年の創業。北海道で初めてアイスクリームを登場させ、大正・明治・昭和初期と一世を風靡した。そのさわやかで独特な風味は、懐かしい手造りの味として、87年も親しまれている。

初代が創業した美園は、「客が和服・着物などよそいきの格好をして集まるぐらいおしゃれな店だった」という。店内の壁を飾る当時の写真を見ながら「初代の頃の客は『美園のクリームを飲みに行こう』が、うちに来る時の合言葉。今、アイスを食べに行こうなんて言う若者もいるけど、アイスクリームは食べるんでない飲むもんだ」

大正から始まった店は、1代目、2代目の頃、夏場は特に忙しく、外に長蛇の列ができ、北海道一、回転率の良い店と言われた。昭和後半から、現マスター3代目は、父2代目と一緒に営業を始めた。そばやラーメンなど沢山のメニューがあった。

しかし、昭和50年になり、ファーストフードの時代になり、長崎屋もでき、都通りを通る人が少なくなった。2代目から3代目と引き継がれたが、「新作を作れば売れるが、またすぐ新製品を作らなければ、飽きられる。母親も調理師も年になって、ふと気付いた時には時代が変わっていた」

それからは、2Fのみの営業に変え、1Fを貸店舗にした。従業員も減らし、1、2年営業したが、「なんだかムズムズしてきた。このまま死ぬのはヤダと思った」という。その時に、「ふっと『美園と言えばアイスクリーム』と天から聞こえてきて、それから考え始めた。何が何でもアイスは捨てられない」と、今までのアイスの造り方をバラバラにして、キーワードを“小樽・大正”と大正ロマンのアイスを造り出すことにした。

しかし、初代のレシピはなく、2代目のアイスも初代から引き継いだものだが、味はブレンドされ、そのものではなかったが、“口が覚えていた”。叔母や近所の人、昔の頃の客に相談したりして、何回も試したという。「大メーカーなんか冗談じゃない。生意気と言われてもNo.1の味を作るとやってきた」

美園のファンに贈る“大正ロマンアイス”。「“昔、おばあちゃんに連れて来てもらって、懐かしくなって来た”その人が、今度は孫を連れて来て、昔の思い出をアイスを食べながら話してくれると本当にうれしい。100年は守って続けたい」と、小樽の思い出を背負う美園アイスクリーム、64歳のマスター。

美園アイスクリーム店舗 アイスクリームパーラー美園

営業時間10:30~21:00(火曜定休)
小樽市稲穂2-12-15
0134-22-9043

お店のHP
2006年1月のベストマスター
小樽洋菓子舗 ルタオ

伊藤 浩三マスター

 洋菓子を作り続けて27年。「手で作り上げた時に、幸せを感じる」と話す、洋菓子舗「ルタオ」(堺町7)のグランドシェフ。

 北照高校を卒業して就職したが、「おもしろくなくて、すぐ辞めちゃったんだ。しかし、母親に“働け”と言われ、たまたま母親の大好きな菓子を作る仕事を見つけたので、気軽にやってみたのがきっかけ」という。

 小・中・高と“ヤンチャ”で、「母親がよく学校に呼ばれたんだよ。迷惑かけたんだ。だから、迷惑はもうかけられないと思って、働く場所を探したんだ」

 18歳から38歳まで、小樽で20年も修行を続けてきた。「上の人によく叱られたよ。でも、今では、本当に感謝している」と話すマスターは、現在、若い職人を叱る立場。「若いものが成長していくのを見てるのはうれしいね」と、ニッコリと微笑む。怒ることはないという。菓子作りに興味がある人、好きな人をしっかり成長させたいと話す。

 25歳の時に結婚して、小樽から離れられなくなったが、そのおかげでルタオに巡り合った。「小樽にいたからだろうね。ルタオがオープンするということで話があって、本当に感謝している」

 気軽に始めた菓子作りの仕事だが、「作って幸せを感じるのは誕生日ケーキかな。家族がひとつになって、誕生日を祝うメインとなるケーキを作れることがうれしい。今では誇りにしている」という。

 ルタオがオープンしてから7年が経つ。はじめは地元の人が足を運んでくれなかった。試行錯誤の末、宅配サービスをはじめ、徐々に客が増えてきた。今年、テレビで“ドゥーブルフロマージュ”というチーズケーキが紹介され、市内、市外、道外から注文が殺到。「いやぁ~本当に売れたよ。やっと味も『ここ』って決められるようになってきた」

 「でも、このケーキが売れたからって、うぬぼれないで、謙虚な心で、ひとつひとつ、お客様のことを思って作っていきたい」と、ケーキを作り続ける、小樽の観光名所堺町通りの洋菓子舗「ルタオ」のグランドシェフ。

小樽洋菓子舗 ルタオ

営業時間9:00~18:00(季節により変更有り・年中無休)
小樽市堺町7-16
0134-31-4500
0120-46-8825